2018年11月13日、ジャカルタにて第4回APMA執行委員会が開催された。
委員会では、この9月に欧州議会で採択されたEU新著作権指令案および11月5日、6日にメキシコシティで開催されたCIAM総会について情報を共有した。続いて、APMAにとっての優先課題のひとつである著作権バイアウト問題に関し、香港大学のリー教授に委嘱したアジア太平洋地域における実態調査の進捗について、リー教授のビデオメッセージが投影され、2019年5月に最終報告予定であることが発表された。
著作権バイアウトに関する各国の動向について執行委員から報告があり、チェルンピパト委員から、タイでは依然としてバイアウトが横行しており、最近、コンサートで自作の楽曲を演奏したシンガーソングライターが著作権を買取った会社から訴えられて逮捕された事例が報告された。弁護士がこの問題をメディアやSNSに拡散して会社の非道を訴えた結果、買取り会社が世間の批判を浴び、会社は訴えを取り下げたうえ、今後発生する使用料が本人へ分配されるよう改められた。チェルンピパット委員は、本件はメディア戦術が奏功した例だが、氷山の一角であると説明した。
この他、APMAの運営費のあり方についても議論を行った。次回執行委員会は2019年5月29日、東京で開催される。
また、翌日11月14日には第2回APMA総会ならびにAPMA・CISAC・WAMIの共催による創作者セミナーが開催された。
APMA総会では都倉会長がAPMAの1年間の事業報告を行い、壇上でインド、ミャンマーを含むAPMAメンバーの創作者を紹介した。
創作者セミナーでは「著作権バイアウト問題」と「価値の移転問題」をテーマにした2つのパネルが行われた。
「著作権バイアウト問題」のパネルではパネリストがインドネシア、インド、日本、韓国、タイにおける著作権バイアウトの事例を紹介し、課題の解決に向けた取組の必要性を確認した。
「価値の移転」パネルではEU新著作権指令案やアジア太平洋地域における各国のセーフハーバー制度の情報が共有され、パネリストがコンテンツ共有サービス・プロバイダーの利用責任や創作者への公正な報酬の還元について議論した。
アジア太平洋地域各国から集まった多数の創作者が出席する中、著作権バイアウトの実態を周知するため、APMAによりジャカルタ声明が発表された。
ジャカルタ声明
APMA(アジア・太平洋音楽創作者連盟)に参加する音楽創作者たちはジャカルタ※に集い、著作権バイアウトという慣行が創作者に与える影響を検討した。著作権バイアウトは減少するどころか、ますます増加し、デジタル動画コンテンツやゲーム等の分野において、不当に利用されている。
著作者の排他的権利は多くのまた様々な国際条約によって認められているにもかかわらず、創作者は制作会社および他の強力な事業者との交渉において、明らかに商業的に不利な立場に置かれている。
著作権バイアウトの慣行は、音楽創作者の社会および経済に対する貢献を損なうものである。APMAはこのような非道な慣行について広く一般の注意を喚起したい。こうした不公正な業界慣行は廃止され、創作者のために健全で公正な報酬の得られる未来が保証されるべきである。
※インドネシアでは、28/2014著作権法18条に「終了権」が存在する。著作権譲渡契約が25年を経過すると、著作権が創作者に戻ると規定されている。しかしながら、著作権バイアウトは今なお広告業界に蔓延している。ブランドや代理店は、通常、契約書の中に不公正なバイアウト条項を盛込もうとする。音楽創作者は公正な報酬を得られないばかりか、著作権そのものを失ってしまうことさえある。